(解散)
第五十五条 管理組合法人は、次の事由によつて解散する。
 一 建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)の全部の滅失
 二 建物に専有部分がなくなつたこと。
 三 集会の決議
2 前項第三号の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。

参考
 旧法第五十五条 管理組合法人は、次の事由によつて解散する。
 一 建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)の全部の滅失
 二 建物に専有部分がなくなつたこと。
 三 集会の決議
2 前項第三号の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
3 民法第七十三条から第七十六条まで及び第七十八条から第八十二条まで並びに非訟事件手続法第三十五条第二項及び第三十六条から第三十七条ノ二までの規定は、管理組合法人の解散及び清算に準用する。

1.解散・清算の趣旨
55条は管理組合法人の解散及び清算に関する規定です。
解散とは、法人を解消することで、一定の解散原因が発生すると法人は解散することになります。
ただ、解散が即法人の消滅というわけではなく、実際に解散して消滅するためには解散前に法人に帰属していた権利義務関係を整理して後任に引き継ぐがなければなりません。
この整理の段階が清算で、清算が完了(清算結了)して初めて法人に帰属していた権利義務がなくなり法人存続の必要がなくなって法人が消滅することになります。

このように法人の解散・消滅は一般に解散−清算−消滅という段階を経由することになります。
例外的に解散即消滅という現象が法人の合併の場合に発生しますが(包括承継のため清算手続が不要との理由による)、管理組合法人ではあまり考えられません。
ただ、管理組合法人の場合その実体が管理組合という団体ですから、法人の解散といっても一般の法人と異なり団体自体の解消を意味するとは限りません。
解散後も管理組合が存続する場合にはその解散とは単に法人格の解消(法人化前の組合に戻る)に過ぎない場合もあります。

2.解散原因
ところで、法人とは一定の目的のために結成された団体(または財産)に取引の当事者となりうる法人格が与えられたものですから、その目的が成功または不成功の確定で消滅する場合や団体の消滅、法人の存在が社会的に害悪を及ぼすような場合には法人格は不要または剥奪されて消滅することになります。
法人の解散事由(原因)とは、このような事態が発生した場合法人を消滅させるための項目であるのが通常です。

1項の解散事由のうち建物(管理組合の場合は専有部分と共用部分を含む1棟の建物、一部共用部分の管理組合では当該一部共用部分)全部の滅失とは、管理組合の管理対象物が消滅し、管理組合の目的がこれ以上達成されないことが確定することです。
この場合には管理組合法人を存続させる意味がなくなりますから法人は解散することになります。
以上は、管理組合と一部共用部分管理組合との共通の理由ですが、管理組合の場合には建物全部滅失は区分所有権も同時に消滅しますから、区分所有者の団体という管理組合法人の構成員の消滅ということもその理由となるでしょう。

2号の専有部分の消滅とは、まず一部の消滅では残部のもので組合は存続しますから専有部分全部の消滅のことであり、また、共用部分を残して専有部分だけ滅失することがない以上、物理的な消滅は1号に該当しますから法律的な消滅を意味します。

これはようするに、区分建物即ち専有部分は1条の構造上・用法上の独立性のある建物部分を所有者がその所有権の行使の一環として1棟の建物を区分することにより成立しますから、その反対に全部の専有部分の所有権を持つ者がその所有権の行使の一環として建物を区分することを止めることもまた自由ということです(担保権者等利害関係人の承諾の要否は別問題)。

従って、全専有部分を同一人が取得したり、互いに持分譲渡等をすることにより全専有部分を全員の共有にしたような場合には区分建物という所有形態を1棟の建物の単独所有または共有という所有形態に変更することができ、この場合には区分所有権も同時に消滅しますから、区分所有者の団体という管理組合法人の構成員が消滅することになり団体が存続不能となって解散することになります。

ところで、2号の内容および1号から3号までに管理組合法人の構成員が1名という解散原因がありませんから、区分法では組合員一名の管理組合法人を認めていると考えられます。
団体であるなら当然最低構成員数は2名以上が必要なはずですが、このことから区分法は区分建物が存在し2名以上の組合員が生じる可能性がある限り法人の存続を認めていると考えられます。
さきほどの専有部分の消滅はこの可能性が消滅したということでもあります。
従って、成立時の30名要件は法人の設立要件で存続要件ではないといえます。

3号は法人の自治を確認したもので、法人格が不要となった場合、建替え等により清算が必要な場合その他理由の有無を問いません。
この場合には1号や2号の場合と異なり、必ずしも管理組合という団体自体が解散するとは限りませんので法人格のみの解消ということになります。
この議決は成立時の議決と同様に特別決議とされています(2項)。

3.清算
さて、管理組合法人が1項の解散原因の発生により解散すると清算に入ることになります。
旧第3項は清算に関する重要規定でしたが、一般法人法制定に伴う民法等の整理の一環として、第55条の2以下の条文に個別に規定されることになりました。その概略は次のとおりです。
清算に入った法人は清算法人といわれその権利能力は清算目的の範囲に制限されます(55条の2、旧民法73条)。
その清算業務の内部的・外部的(代表)執行機関は清算人といわれています(55条の3、旧民法74条)。
清算はこれまでの取引関係の整理であり多数の一般債権者等に利害関係がある行為ですから裁判所の監督を受け(旧民法82条)、それは主に清算人に対する人事権を含めた監督権の発動によりなされます(旧民法75条、76条、非訟事件手続法)。

清算人は法人の業務を終了して、債権を取り立て、債務については公告の上、債権者の債権の届出を受けてその優先度合いに応じて公平にこれを弁済し、残余財産を確定してこれを引き継ぐものに引き渡すことになります(55条の6・7、旧民法78条から80条)。

なお、清算法人が破産すると破産手続きに移行することになりますが(55条の9、旧民法81条)、1項で破産を解散原因としていませんから、管理組合法人が破産しても解散はないように思われます。
管理組合の統治団体的性格によるものでしょうか。

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