(区分所有者の責任)
第五十三条 管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第十四条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第二十九条第一項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による。
2 管理組合法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときも、前項と同様とする。
3 前項の規定は、区分所有者が管理組合法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、適用しない。

1.趣旨
53条は管理組合法人の債務についての区分所有者の責任に関する規定です。
元来、法人とその構成員たる個人とは別箇の人格ですから法人の債務・責任と個人の債務・責任とは別個のものであるのが原則です。
従って、法人の債務の責任を構成員個人が負担することは原則としてないこととなっています。
このことは民法法人では当然の前提であり、権利能力なき社団の場合もまた同様に理解されています。

しかし、社団は一定の目的のために組織された団体であり、その目的により性格は様々ですから構成員の団体債務に対する無責任ということも団体の目的や性格によって取り扱いを別箇にしても問題のない事項です。
この点、合名会社ではその組合的性格からか会社の債務に関して構成員たる社員の無限責任が認められています。

そして、もともと管理組合の場合にはその事業は組合員全員のためのものですから、その債務は組合員のために管理組合が負担しているという性質があり、組合員が管理組合の債務につき何ら責任を負わないという結果は不当というしか有りません。

それに、法人化前には管理組合の債務は管理組合という団体の債務であると共に全区分所有者が総有的に負担する債務という二重の性格を有していました。

従って、53条は法人化後もその本質的な性格に変化がないこと、ただし、19条・29条の規定同様に各自の負担は総額の不可分または連帯の債務ではなく持分に分割された分割債務(債務自体は法人に帰属するので区分所有者は責任のみ負担するという考えの方が妥当かもしれませんが)を負うと軽減した規定ということになります。

2.組合員の負担割合
各自の負担割合は原則として共用部分の共有持分により、債務の負担割合が別箇に定められているときはその割合によります。

なお、既に規約を持つ管理組合が法人化した場合には29条1項の定めのある可能性がありますが、規約設定時から法人の場合には47条8項により29条は適用除外条項ですから正確には29条1項の準用を言うべきだったように思います。

ところで、共有持分と別箇に定められるこの債務の負担割合は一般に外部の第三者に知れているとは限りませんから(取引相手がすべて規約を見るとは限らない)、一部の者が負担しない等不合理な場合がありえます。
内容にもよりますが、不合理と評価される場合にはこの債務負担の特例の効力が認められないということも当然ありうるでしょう。

3.組合員の負担の条件
負担の条件は、@管理組合法人の債務超過のとき(1項)、A管理組合法人に対する個別財産への強制執行が効を奏しなかったとき(2項)です。
この点、29条の場合と異なり、法人債務の第一次責任は法人として区分所有者個人の責任は二次的・補充的(保証人的)な責任となっています。

@は通常の法人の破産原因ですが(ただし、47条7項で不適用)、債務超過とは管理組合法人の総財産をもってしてはその総債務の弁済ができない状態をいい、個々の債務の弁済期がいつかとは係りのないものです。
従って、現時点で弁済期のきた債務を弁済していても総額の比較で債務の方が多い場合には債務超過となります。
管理組合の貸借対照表で債務の方が多い場合には債権者からの請求を受ける可能性があるということでしょう。

Aは一般に支払停止と見られ支払不能を推測する事由とされます。
やはりいずれも破産原因となっています。
ただし、支払停止では必ずしも支払不能とは限りませんから、所謂検索の抗弁権が認められて支払不能ではないこと即ち管理組合法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明すれば責任を免れることができるとされます(3項)。

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