(監事の代表権)
第五十一条 管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。

1.理事の利益相反の場合の取扱い
51条は監事の代表権に関する規定です。
管理組合法人を代表するのは原則として理事ですが、管理組合法人は建物管理という目的を達成するため組合外部から様々な物資やサービスを調達し、建物内の運営のために区分所有者や占有者と様々な許認事項のかかわりを持ちます。
この場合の管理組合との取引の相手方がたまたま理事である場合には、管理組合法人を代表してその利益のために行動すべき立場と個人としての理益を追及する立場が同一人に帰属することになり、管理組合法人の利益が十分に保障されない事態が生じます。
このように同一人に利害関係の反する立場が帰属する場合には、一方の立場の利益を図ることは即他方の利益を害する不当な結果となるため、自己契約・双方代理として原則として禁止されていますが(民法108条)、このことは代表行為でも同様ですから、管理組合法人においても理事の個人的利益と管理組合法人の利益が双反する事項に関しては理事に代表権はありません。
従って、そのような場合の代表者が必要ですが(さもないと理事個人は管理組合法人との取引が困難となる)、民法に習って特別代理人の選任すること(民法57)は迂遠ですから、理事に利益相反事項に関しては代表権がないことおよびその場合には監事に法人の代表権が認められることを定めたものがこの規定です。

しかし、監事は本来理事の監査をやる立場ですから自ら業務執行を行うことはあまり望ましいことではありません。
しかも、この監事の業務執行に対する監査が存在しないことも問題です。従って、利益相反理事以外に理事がいる場合には、その者に組合代表をさせるべきでしょう。
実務的には理事長が利益相反でその代表権の行使ができないときは、理事長に事故ある時として副理事長が代表することとなります。

尤も、利益相反の禁止は本人の利益保護のためですから、本人がこれを承諾していれば問題ではありません。
従って、利益相反取引でも総会で承認されれば理事が法人を代表して取引することが可能ですが、本条がある以上その場合でも監事に法人代表を認めるべきでしょう。

2.利益相反行為
ここで利益双反する事項とは、組合と理事との取引という形式的な利益相反行為ではなく、実質的・且つ客観的に利益が双反する場合にはこれに該当するとしなければ組合の保護が図れません。
従って、理事が組合を代表して当該理事と機械的に決定された共用駐車場や駐輪場の使用契約を組合所定の条件で所定の契約書により契約することは、形式的には利益相反とは言えても本条に該当せず、理事がその会社やその配偶者と管理組合を代表して定型的とはいえない取引を行うことは、その取引内容が仮に正当であろうと客観的には利益が双反する場合ですから本条に該当し監事が代表権を行使する場合にあたります。

3.本条違反の行為
この規定に反して理事が行った取引は、無権代表行為として原則として管理組合法人の追認(集会の決議)がなければ管理組合法人に効力が及びません(無効)。

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