(理事)
第四十九条  管理組合法人には、理事を置かなければならない。
2  理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。
 理事は、管理組合法人を代表する。
 理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表する。
 前項の規定は、規約若しくは集会の決議によつて、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によつて管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。
 理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。
 理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(第四十九条の四第一項の仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。
 第二十五条の規定は、理事に準用する。

参考 旧法(理事)
第四十九条 管理組合法人には、理事を置かなければならない。
2 理事は、管理組合法人を代表する。
3 理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表する。
4 前項の規定は、規約若しくは集会の決議によつて、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によつて管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。
5 理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。
6 理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事が就任するまで、なおその職務を行う。
7 第二十五条、民法第五十二条第二項及び第五十四条から第五十六条まで並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五条第一項の規定は、理事に準用する。

1.理事の地位
49条は理事に関する規定です。
管理組合法人は社団法人という団体で、それ自体は肉体を持たないため、団体自体の行動を団体に成り代って行う個人の行動を通して当該団体の行動として認識する必要があります。
このような行為を団体事務の執行といい、このような地位にある個人の地位を団体の(執行)機関といいいます。

執行機関の名称は法人の種類に応じて様々ですが、管理組合法人では一般法人法と同様の理事という名称を採用しています。
理事は管理組合法人たる社団法人の常設の執行機関(1項)且つ代表機関(3項)です。

2.理事の員数
理事の数は1名でも複数名でもかまいませんが、理事会という組織が法定されていません。
これは民法でも同様でしたが法人の規模・目的が様々なためあまり複雑な組織を強制することを法が嫌った結果といえます。
ただし、理事が複数の場合は理事の過半数で法人の事務を決定するので(2項)事実上理事会のようなものを認めているともいえます。
この点、現実には理事会を構成して管理を行っている管理組合が殆んどですから、立法論的には管理組合を法制化するべきであったといえます。
なお、一般法人法制定に伴う民法改正により民法52条2項の準用に代えて第2項が新設され、改正前の2項以下は繰り下げになりました。

3.理事の代表権とその制限
このように、法律上は理事会という組織・機関はありませんから、理事会を構成するとしても管理組合法人の任意組織・機関であり、その業務範囲も法律の規定に反しない限り自由に設定することができます。
一般には、総会決議事項ほどのことではない日常的事項の決議機関と理事の監督機関という位置付けとなりますが、法定機関でないことから理事会の理事に対する監督としての代表権の制限も善意の相手方には対抗できないということになります(第49条の2、民法改正前54条)。

また、理事は複数いても区分法上は各自が同等の権限を持ちますので、各自が単独で管理組合法人を代表することになります(4項)。

ただし、通常は、理事会を組織して理事長を定め理事長が管理組合法人を代表して、一般理事には代表権を与えないとするのが一般ですから、この需要にこたえるため理事長等の代表理事をさだめること(この結果一般理事は代表が原則としてできなくなる。)や、2名以上の理事が共同してのみ代表権を持つこと(一般には2名の共同代表が通常、ただし、3名以上でも副理事長は2名以上等と或る理事だけ制限しても双面的な共同でも片面な共同でもかまいません。)を規定することができます(5項)。

4.理事の選解任
理事の選任に関しては8項で25条の管理者の選任の規定を準用していますから、管理者の場合と同様、理事は規約または集会の通常決議で選任されまたは解任されます。
単独区分所有者権の行使としての裁判所による理事の解任の場合も同様です。

5.理事の任期@
理事の任期即ち管理組合法人と理事たる個人との委任契約の期間は2年間とされます(6項)。
2年経過すれば契約は終了しますから理事は当然に退任することになります。

ただし、例外があって、その一つは当該理事の退任により理事がいなくなってしまう場合や理事の定数に欠員が生じる場合には後任の理事が選任されるまで退任した理事は従前どおりの権利義務をそのまま保有して理事の職務を行うということです(7項)。
このことは執行機関不存在の空白期間による本人の損害を防止するための対策であって、委任に本質的な取扱い(民法654条、商法258条)となっています。
同様の取扱いは理事の辞任による退任の場合も同じですが、解任の場合には当該人に理事の職務を認めることは不適当ですから7項の適用はありません。
従って、速やかに後任の理事を選任することになります。
この場合に、後任の理事が選任できない時点で緊急の必要があるときは、裁判所に申し立てて仮理事を選任することも可能です(49条の4第1項、民法56条)。
この仮理事の選任申立ては区分所有者に限らず管理組合の相手方もまた可能であり、仮理事選任の管轄裁判所は管理組合法人の事務所(所在地)を管轄する地方裁判所です(49条の4第2項、非手法35条1項)。

6.理事の任期A
もう一つは、実務上理事が通常総会で選任されその開催日時が必ずしも常に365日後とは限らず、また初年度会計期間が1年間より長短の場合には、理事の任期満了までに通常総会が開催されない不都合な事態が起こりうるということです。
そのときには、上記7項の取扱いとなるわけですが、7項の例外的救済規定の適用が常に起こるというのも不適当ですから、理事の任期の法定期間を多少延長することにより正規に理事任期と選任のための通常総会の開催との整合を取るほうが望ましいことになります。
このため、法定期間は3年を最長期として規約で延長することができることとし、これにより例えば理事の任期は2年後の通常総会終結の日までとする、等の定めが可能です。

inserted by FC2 system