(仮理事)
第四十九条の四  理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。
2  仮理事の選任に関する事件は、管理組合法人の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

参考 旧法第49条(理事)
7 第二十五条、民法第五十二条第二項及び第五十四条から第五十六条まで並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五条第一項の規定は、理事に準用する。

一般法人法制定に伴う民法および非訟事件手続法の改正により民法56条(仮理事)非訟事件手続法第35条(仮理事の管轄)の準用に代えて第49条の4が新設されました。

仮理事
49条の解説のとおり、理事は管理組合法人の執行機関且つ代表機関であり、理事なしには管理組合法人の行為は能動的にも受動的にもありません。理事の員数は区分法には規定がなく一人いれば法律的には十分ですが、この一人を死亡、失踪、職務停止の仮処分等により欠く事態が生じるとその時点から管理組合法人業務は停止してしまうことになります。

一般には、規約において理事の定数を定めているでしょうから、その員数を欠く事態が生じた場合も規約上有効な業務執行の意思決定ができず、組合業務は停滞することとなります。

通常は、この事態の解消は管理組合における速やかな理事の選任で行われますが、管理組合の内紛・休眠化その他で理事選任のための総会が開催されない場合は、解消の手段が無く、この状態が継続することとなります。

この状態では管理組合法人は、第三者に対し、また第三者は管理組合に対して法律的な行為ができない状態になりますから、一般組合員も困りますが一番困るのは管理組合法人と取引をしている第三者です。例えば電気料金は生産物の対価として2年で消滅時効にかかり(民法第173条第1号)、管理会社の受託管理料は商事債権として5年で消滅時効にかかりますが(商法第522条)、これらの相手方が時効を中断するには管理組合の代表者に請求を行い、また最終的には管理組合法人に対して訴訟を提起する(それは代表者に対して訴状を送ることを意味する。)必要がありますが、いずれにしても代表者が相手方になります。

また、反対に組合管理費は5年の短期時効にかかるというのが最高裁の判決ですが、管理組合が滞納組合員に対して裁判を提起するにも代表者が必要です。

このような場合に代表者の不存在を理由に相手方の権利行使や義務履行が阻止されることは不当ですから、一般に裁判所の選任による仮の代表をもって代表の一時不在を解消することとされています。

これが仮理事の制度で、裁判所の手を煩わす関係上、管理組合の自主的な選任を期待できない場合に、損害を避けるため必要性があるときにこの理事の不存在に関して法律上の利害関係のある者を救済するため、その者の申立てにより仮理事を選任できることとされています。

なお、検察官は通常は刑事裁判の原告としての公訴提起者ですが、民事においては公益の代表者として、社会的に不利益な事態に際してそれを解消するため申立て権が認められています。

裁判所が関係する事件・事柄に関しては、裁判所の便宜を図り申立権者が申立先を迷わないため、その事件を担当する裁判所が予め決められており、これを管轄といいます。

仮理事選任事件は、第2項により、管理組合法人の所在地(事務所の住所、通常は当該マンションの住所)を管轄している地方裁判所が担当します。

inserted by FC2 system