(理事の代理権)
第四十九条の二  理事の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

参考 旧法(理事)
7 第二十五条、民法第五十二条第二項及び第五十四条から第五十六条まで並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五条第一項の規定は、理事に準用する。

一般法人法制定に伴う民法改正により民法54条(理事の代理権)の準用に代えて第49条の2が新設されました。

理事の代理権(理事の代表権とその制限)
理事は、管理組合法人の代表機関且つ業務執行機関ですから、ここで代理とは代表を意味します。

理事の権限は管理組合法人の全般に及びこのことは、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第77条第4項によれば「代表理事は、一般社団法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」と表現されます。

この権限の広大さのため理事単独の判断で処理できる事項は制限され、一定の事項は総会や理事会の承認を要するとされることが一般です。
この制限は法人内部の制限であり、各法人ごとに区々となりますから、当該法人で理事の行った行為がその制限に抵触した場合は定款・規則違反で無効(当該法人での代表権限の逸脱による無効・無権代理と同様の考え方)という問題が発生します。

法人が任意に設定した制限の違反のために取引が無効となることは相手方に不測の損害を与え取引の安全を害しますし、これを回避しようとすれば相手方は法人の内部的制限を完全に調査しなければ理事を相手に取引ができないということになり取引の迅速を害することとなります。

この結果は代表制度ひいては法人制度そのものの否定を意味することになりますから、法人内部の代表権限の制限は一般に相手方に主張できないこととされています。
一般法人法第77条第5項では「前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」とされ、本条も同様です。

善意の第三者
この制度により保護されるのは、善意の第三者(取引の相手方)です。類似の制度として民法の表見代理がありますが、法人制度は代理制度より取引の安全の要請が強いため表見代理と異なり無過失は要件とされていません。善意(知らない)、つまり代表権に付された法人内部の制限を知らない場合は、この制度により保護され法人からの無権代表(取引の無効)の主張を受けません(事実として受けないのではなく、主張されてもこれを再主張すれば無権代表を理由に裁判で負けることが無いということ)。

保護されるのは善意であれば足り、過失により善意でも保護されますが悪意に近い重過失の場合は別と考えるべきでしょう。

悪意(内部的制限の存在とその違反を知っていること)の場合は、無権代表であることを承知しているわけですから保護する必要はなく、その制限が法人内部で必要な理事会決議その他の手続で制限が解除されたことを一般的に要請される程度に確認(無過失)しない限り無権代表の主張を受けることとなりますが、真実は解除がなされていなくとも過失無く解除を信じた場合はその制限違反の存在につき善意であると同視できると思われます。

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