(議事録)
第四十二条 集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。 3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。
4 第二項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び集会に出席した区分所有者の二人が行う法務省令で定める署名押印に代わる措置を執らなければならない。
5 第三十三条の規定は、議事録について準用する。

参考 旧法(議事録)
第四十二条 集会の議事については、議長は、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。
 第三十三条の規定は、議事録に準用する。

1.趣旨
42条は議事録に関する規定です。
集会は管理組合の最高の意思決定機関として適法に議決された内容は、欠席者や反対者も含めた全ての区分所有者を拘束し、その効力は将来の区分所有者たる特定承継人や占有者にも及びますから、後々の争いを防止するため集会で何が議決されたのか、集会は適法に開催されたのか等を記録に残すことは重要です。
このように議事録とは、後日のため会議の適法性および議決事項を証明するための証拠方法(証拠書類)であり、その重要性から制度として作成が担保されている必要があるため会議の主催者である議長に作成義務が課されています。

なお、新法により1項に電磁的記録が追加され、規約・議決権行使に続く3段目として議事録も電磁的方法での記録が認められました。

電磁的記録については、法務省令が出ることになっていますが先行する会社においては、「法務省令で定める電磁的記録は、磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したものとする。(商法施行規則2条)」とされていますから、今までは、ワープロで作成したものをプリントアウトして、これに署名捺印して議事録としていましたが、新法施行以後にはワープロのファイル自体(正確にはファイルを記録したフロッピー、CD等の媒体)を議事録とすることができるようになります。

議事録を書面で作成するか電磁的記録で作成するかは、作成義務者兼作成権限者である議長に一次的な判断権があります。
勿論、規約や総会決議でどちらかにする旨決まっている場合には議長はそれに従う義務があることは当然です。
しかし、そうでない場合には、議事録作成時に決めてもいいのですが、会議で証人の指名の時点でどちらにするかを明らかにすることが望ましいと思われます。

ただし、1項が規定するのは議長がその責任において書面または電磁的記録で議事録を作成することであり、このことは必ずしも現実に自らの手でワープロ打ちをすることを意味してはいませんから実際の書面自体を書記担当の理事その他の者に作成させることができることは当然です。

2.議事録の記載内容
2項は議事録の記載事項および署名を定めた規定です。
議事の経過の要領とは、会議の適法要件の簡潔な記録であり、その結果とは決議内容を指すものと思われます。

上記のとおり議事録は会議の適法性と議決事項を証明するための書類ですから、書式の指定はないものの、まず@適法要件証明のための事項として何時・どこで・誰が・何を・どのように、という議事の経過として会議の日時・場所、集会定数と出席区分所有者数および議決権数、会議の経過、議事次第と議決要件の確認を、次にA議決内容の証明のための事項として、何をどうしたという決議内容、可否の別を記載することが必要です。

議事の経過をどの程度詳しく記載するかも原則として自由ですが、議事録の目的はテープ起こしのように誰が何を話したかを細かく知ることにあるのではなく、会議で何が決定され、その会議は適法だったのかを明らかにするためのものですから、決定事項を明確にするのに寄与しない事項は記載する必要がなく、逆にあまり詳細な記載は会議の適法性と決議内容の理解の妨げともなりかねませんので記載しないほうが望ましいといえます。
2項でも要領(必要な要点を明確且つ簡潔に記載したもの)を記載するものとしています。

3.議事録内容の証人
議事録は後日のための証拠書類ですから、その信用性が担保されている必要があることは勿論です。
このため作成責任者の議長がその責任の明確化および内容の真実性を担保する趣旨で議事録に署名捺印を行うものとしています。
ただし、作成者が自ら真実性を保障してもその信頼性はあまり高くはありませんから真実性担保に客観性を持たせるために実際に集会に参加した区分所有者の証人2名も議事録に署名捺印するものとしています。

この2名は集会の最初か最後に指名されその旨議事録にも記載されますが、2名という数は区分法が議事録の証明力を担保するために必要と認めた数値ですから、これを減少することは証明力が減退するため認められませんが増員することは証明力を増強することとなるため問題となりえます。
しかし、議事録は重要な書面ですから必ず作成される必要があり、そのためには作成の便宜という利益も議事録規定の重要な考慮の要素といえますから、何らの理由なく(抽象的に証明力の増強というだけでは)議事録作成の便宜に反する証人の増員は区分法の趣旨に適うものではないでしょう。
ただし、集会当日の出席者が1名だった場合にはその旨付記してその一名の署名捺印で足りますし、2名以上の証人の署名捺印があっても2名の署名捺印がある限り区分法上は適法となります。

4.署名
他人の手やプリンター、判子その他の方法で氏名を記載する記名(自署以外の方法で本人名を記すもの)と異なり、署名ですから氏名を本人が自署(手書き)することとなります。
このように、一般に法律では署名と記名とは用語が異なり、署名(捺印不要)の効力と記名捺印の効力が同等と評価されていますが、署名の他に捺印も要求するほどの理由は考えにくいところですから、ここでの署名は通常の場合の例示であり書名には記名も含むものと考えるべきでしょう。
捺印の印鑑は本人の同一性を担保できるものなら何でもよく実印に限らず認印で十分です。
ただし、記載内容に登記事項があり議事録が登記の原因証書となる場合には登記申請上実印が必要なのが通常です。

ところで、新法で議事録に加わった電磁的記録は容易に書き換えができますので、その内容の真実性を担保するための署名捺印に代わる証明手続きが特に問題となりますが、法務省令にて定めることとなっています。

この省令も未発表ですが、先行する会社では、「法務省令で定める措置は、電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律 (平成十二年法律第百二号)第二条第一項 の電子署名をいう。以下同じ。)とする。商法施行規則3条)」とされ、電子署名及び認証業務に関する法律では「第二条  この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
 一  当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
 二  当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
 2  この法律において「認証業務」とは、自らが行う電子署名についてその業務を利用する者(以下「利用者」という。)その他の者の求めに応じ、当該利用者が電子署名を行ったものであることを確認するために用いられる事項が当該利用者に係るものであることを証明する業務をいう。
 3  この法律において「特定認証業務」とは、電子署名のうち、その方式に応じて本人だけが行うことができるものとして主務省令で定める基準に適合するものについて行われる認証業務をいう。」とされています。

5.議事録の保管・閲覧
なお、議事録はその目的を達成するために保管し且つ利害関係者の閲覧に供されますから、規約の保管および閲覧に関する33条の規定が議事録にも適用(準用)されます。
区分法上は決議に参加した区分所有者も議事録の内容確認には閲覧という手段しかありませんが、一般には議事録の写しを区分所有者に配布する例もあり、議決内容の周知徹底ということから望ましい方法といえます。

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