(議決権行使者の指定)
第四十条 専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。

1.本条の趣旨
40条は専有部分の共有者にその中から議決権行使者を選定することを求める規定です。
区分所有者は区分所有権を有する者であり、専有部分の共有者も持分が所有権である以上当然に各自が区分所有者です。
従って、各自が独立して区分法で規定される区分所有者としての義務を負担することになりますが、議決権という権利行使の場合には専有部分を最小単位として、その最小単位で意思の統一を強制し、一人が所有することが通常の他の専有部分との間で議事における取扱いを平等にするのがこの規定の趣旨です。
この結果、議事における区分所有者数は共用者全員で1人とカウントされることになります。

しかし、100uの専有部分を二人で1/2ずつ共有している場合と、同じマンションの40uの専有部分を人のが単独所有している場合を比較すると、共用部分の持分は単独所有者より共有者1人の方が実質的に大きいにもかかわらず、その各々の意見が集会で反映することができないことになりますからあまり合理的な規定とはいえないようにも思われます。
ただ、共有はこのような場合に限らず、いくらでも微小な持分に細分可能であり通常共有者間はある程度の親密な関係にあることからその専有部分での意思の統一を期待することもあながち不当とはいえないでしょう。

2.議決権行使者
共有者間で選任された議決権を行使すべき者一名は議決権行使者といわれますが、誰を議決権行使者とするかは共有者間の協議で定められ、協議がまとまらない場合にはその持分の過半数で選任されることになります。
共有者の中で議決権行使者のみが集会の招集通知を受け、集会に出席して共有者全員の議決権を行使する権利がありますので、選任されたら速やかに管理組合にその旨届出をする必要があります。
従って、議決権行使者が未選任の場合にも、共有者の一名に招集通知がなされますが、議決権行使者が選任されなければ集会の出席権も議決権も認められず結局共有者は集会での意思表明ができないことになります。

3.議決権行使者選任の単位
このように共有での専有部分はその単一の意思を形成するように仕組まれていますから、その意思は構成員たる共有者の個性を離れた抽象的な総合人としての人格の意思といえます。
そうするとこの総合人の人格は構成員が異なる場合はもとより、同一の構成員であってもその持分構成が異なる毎に形成されるべき意思は異なるはずですから、別の人格を観念することができます。
従って、専有部分の共有者の議決権行使者は共有者が異なるつど、およびその持分構成が異なるつど一名選任されることになります。
この反面、同一の共有者で同一の持分構成の場合には同一の総合人となりますから、単独所有者が複数の専有部分を所有する場合と同様に、名寄せされて区分所有者数としては一名、議決権はその所有する各専有部分の議決権を合算したものということになります。

4.議決権の不統一行使
また、議決権の不統一行使については専有部分はその単一の意思を形成するのが法の建て前である以上専有部分の単位を細分するような不統一行使はそもそも認められません。
複数の専有部分がある場合には議決権自体は形式的には各々の専有部分毎に行使ができますが、区分所有者数と併用する区分法の原則的議事方法の場合には一名の区分所有者を更に分割できませんのでこの場合も不統一行使はできません。
区分所有者数の要件を外す標準管理規約の場合にはこのような制約がありませんが、一人の意思は一個ですから不統一行使は不合理なものとして否定すべきと思われます。
ただし、信託等実質上複数の意思の存在が肯定できる場合には不統一行使も認められるべきです。

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