(議決権)
第三十八条 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。

1.議決権の趣旨
38条は議決権に関する規定です。
議決権とは文字通り議決に参加する権利を言いますが、この規定では議決権は投票権のように1人1票のような平等なものではなく割合のある不均一なものとされています。
これは管理組合の議事が議決権者たる区分所有者の個人人格にかかわるものというより共有者間の共有物の管理方法という色彩が濃厚のため、その発言権たる議決権も持分に比例することが公平であるという考えによります。

尤も、区分所有は個人の生活の本拠たる住居を目的とする例が多くありますから、個人人格の平等という点も全く無視することはできません。
そのため区分法ではこの人格の平等と持分権者間の公平を区分所有者数と議決権の双方を要件とする39条の議決要件で調整しているものと考えられます。

2.議決権の割合
14条に定める割合とは、共有持分の割合であり内法計算で算定される専有部分の面積の割合のことですが、議決権割合は規約での特則を許容していますから、持分を内法面積基準以外の壁芯面積基準とした場合の持分割合や建物の階層別方位別の効用比を加味した価値基準による持分割合とすることも規約に定めれば可能です。
このような決め方はいずれも持分に応じた議決権である点で区分法や民法の趣旨に添うものです。

しかし、この決め方は法の趣旨には忠実でも、各戸の議決権が○○.○○等の4・5桁の数値となりますし、且つ議決権合計も相当大きな数値にならざるを得ません。
議決権の役目は、議決の際に必要な多数が確保されているか、少数召集権に必要な議決権総数の1/5は満足しているか等を判断する割合としての指標ですから、割合が表されていれば面積の値に一致しなければならないわけではなく百分率でもかまわないものです。
従って、議決権総数を10000、100000等の数値にして各戸の持分を換算した議決権とするのが実際の総会運営の便宜に適うでしょう。

ところで、規約による特段の定めは持分によらない議決権も許容しているように読めますから、上記の10000、100000等の数値がまだ大きいと感じられる場合には、100または1000の数値にするために各戸の議決権を四捨五入等により丸めることも可能です。
区分建物間で本来あるべき権利割合に比べ多少の不公平は生じますが、実際上の権利行使の効果は殆んど変わりがないでしょうから、その不利益と議決権計算の便宜の利益を比較すると議決権計算の便宜の利益が勝り適法な定めといえるでしょう。

この点、議決権計算の便宜のため持分に関わらず1戸1議決権という定めも本条が許容しているとの考えもありますが、1戸1議決権は同規模の住戸の集合体の場合には計算の便宜の利益の優越という理由から認められても、議決権の本体は所有権の持つ所有物の自由な管理・使用・処分権能ですから本来持分の多寡に比例して表現されるのが当然であり、このような所有権の割合を捨象した割合は区分法や民法の趣旨に添う方法ではありません。
面積が倍も違うような場合に1戸1議決権では実質的に少ない面積の人が多い面積の人の倍も投票権を持つような結果となり公正とはいえないでしょうし、本来あるべき持分比での議決権の場合と比べて権利行使の結果が変わらないともいえません。

3.議決権の表示
議決権は原則として持分割合と同様な数値になりますから、その総数が全専有面積の合計値になります。
例えばAとして99.68uの建物とBとして76.88uの建物の2個の区分建物の場合には議決権総数は176.56(100%、小数点を嫌い、100倍にして整数値に直すことが多いようです。)、個々の専有部分の議決権はその面積分の数値がその値となりますのでAの議決権は99.68(56.46%)となりBの議決権は76.88(43.54%)となります。
なお、この場合に計算の便宜のため数値を四捨五入する等により整数値とする場合には、例えば議決権総数を100、Aの議決権は56となりBの議決権は44となります。

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