(決議事項の制限)
第三十七条 集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
2 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。

1.規定の趣旨
37条は決議事項の制限の規定です。
集会は組合員全員で構成される管理組合の最高の意思の決定機関であり、各組合員はそこでの討論や表決で各々の意思を表明することにより各々の利益をできることになっています。
この審議権を十全のものとするために、35条で集会が何時どこで開催されるかの他、何について審議するのかを予め通知することが召集手続き上要求されていますが、予告された事項以外のことが審議・議決されたのでは35条定めは骨抜きとなってしまいます。
このように35条に定める召集手続きを実効性のあるものにして各区分所有者の審議権を保証するのが1項の趣旨です。

2.議案変更の範囲
尤も、予め通知した事項といっても一字一句同じのものを議決しなければならないというわけではありません。
集会は上程された議題ないし議案について出席者の様々な意見を集約して組合員の総意を形成する場ですから、この意見の中には当然議案の修正ないし変更というものも含まれます。
集会で諸々の事項に関し討議検討されることは常識であり、このことは欠席者も当然予測できることですから、修正ないし変更がこの予測の範囲内であるならこれも実質的に予め通知した事項に包含されると考えられます。
従って、予め通知した事項と同一性のある範囲であれば集会は原案を変更修正することができ、1項に違反するものではありません。

3.3項の趣旨
ところで、この決議事項の制限も結局の所区分所有者の権利・利益を守るための規定ですから、その利益の帰属主体がその利益を放棄するときは適用する必要がないことになります。
この点は召集手続きの場合と同様ですから、全員の同意がある36条の場合にはこの規定の適用もありません(3項)。

4.制限の緩和、2項の場合
更に、予め通知した事項という決議事項の制限は、何かを決める場合には常に35条に定める1週間または規約に定める召集期間が必要ということですから、召集通知後に判明した緊急議題や集会での変更が通知事項の同一性を超えるような場合には、再度召集する必要があります。
しかし、欠席者の意向がどうであれ出席者で議決要件に満ちる賛成があればその議案は可決されるわけですから、再度召集する時間がないような場合には出席者のみで議決できる方が便宜に感じられることがあります。
このような場合に備えて決議事項の制限を緩和することを認めたのが2項の規定です。

ただし、決議事項の制限は区分所有者の利益を守る重要な制度である一方、欠席者の意見が集会の議決を左右することもありうるわけですから、決議事項の制限を緩和するためには、その旨が規約で定められて予め参加者に予告されている必要があり、且つ特別決議事項ではそれほどの緊急性も考えにくく緩和による集会参加者の便宜より欠席した区分所有者個人の利益保護の要請が勝りますから緩和を認めないこととしています。

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