(招集手続の省略)
第三十六条 集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。

1.規定の趣旨
36条は、召集手続きを省略できる場合の規定です。
集会が区分所有者の権利義務に影響を与える重要な会議ですから、会議のメンバーである区分所有者の会議への準備およびその出席の機会が確保されなければなりません。
35条に定める会議の召集手続きの法定は集会参加への準備およびその出席の機会の確保を目的とした召集手続きという重要な手段の法的保護の表れです。

このように、召集は各区分所有者の集会出席権を保護する手続きですから、その保護を受ける者が保護を辞退すれば召集手続きは不要となるはずです。
従って、全員が承諾すれば全員に対する召集手続きが不要になり、召集手続きなしで総会が開催できるというのがこの規定の趣旨です。

2.規定の対象
尤も、この規定が本来対象とするのは少人数の管理組合で相互の連絡が1週間の事前予告が長すぎるくらい速やかに取れるケースのようです。
しかし、大規模な組合においても理屈は変わりません。
ただ、多人数の組合では全員が召集手続きの省略を承諾することは事実上困難でしょうから、この規定が意味を持つのは少数の召集洩れの瑕疵をその者の承諾を得て集会開催前に補完することくらいでしょう。
ただし、手続きに瑕疵があるままで開催された場合にはその集会は違法なものであり、事後の承諾を得ても集会の違法性を阻却するものとは原則として考えられません。
この規定の文言も同意は集会の開催前のものであることを前提とした表現となっています。

3.省略される手続き
なお、この規定が適用される場合には、召集権者による召集・召集の猶予期間・議題や議案の要旨の通知その他召集に必要な諸手続きが不要となります。
尤も、承諾権者は一括して召集の利益を放棄する義務はありませんから、どの手続きを不要とし、どの手続きを必要とするかも自由であり、召集の猶予期間は妥協するが議題や議案の要旨の通知は必要だということも当然可能です。

4.全員出席集会
ところで、上記のとおり事実上は少人数の組合でのケースに限られるでしょうが、この規定が適用される典型的なケースは所謂全員出席集会です。
忘年会その他の懇親会や町内の他の会合等で組合員の全員がたまたま集まった場合に、管理組合の集会で決議すべき事項についてこの機会に決議しようと合意されればこの規定の適用により適法な集会を開くことができます。

ただし、この規定は召集手続きの省略を認めるだけにすぎませんから、特別決議や通常決議に必要な定数を満たすことや建替え決議等の特殊な決議を行う場合の決議内容の具備、利害関係人の意見聴取が必要な場合の当該人の出席確保等召集手続き以外の要件を満たす必要があることは勿論です。

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