(招集の通知)
第三十五条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
2 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。
3 第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。
4 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。
5 第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。

参考 旧法(招集の通知)
第三十五条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
2 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。
3 第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。
4 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。
5 第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項又は第六十八条第一項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。

1.招集規定の趣旨
35条は集会の招集の通知に関する規定です。

集会は全区分所有者が参加して区分法や規約で定める重要事項を審議決定する管理組合の法定の最高の意思決定機関で、その決定は反対者を含めた全区分所有者を拘束し、更には特定承継人や占有者等決議に参加できない者に対してもその効力が及ぶ等により多数関係者に重大な影響を及ぼす会議です。
従って、その会議で決定される事項が適法であるべきことは勿論ですが、その手続き自体も法定されその適法性が要請されるのが通常です。

35条はその会議の端緒たる招集手続きに関する規定です。
そこでは会議参加者の参加の保証が図られるのと同時に招集者の便宜を図り多数者からなる参加者の一部に存する手続きの瑕疵で会議全体が違法となることを可及的に阻止して会議の適法な成立が予定されるのが通常です。
この観点からは、一定期間前の通知や各人宛の通知さらに通常議決事項の議題の通知や特別決議事項の議案の要領の通知は参加の便宜のためであり、通知の期間計算がが到達主義によらず発信主義によること、住所不明時の探索責任を免除すること、掲示による通知の見做し規定があること等は招集者の便宜と会議の適法な成立の確保のためのものといえます。

2.招集の原則
1項は招集の原則規定です。
招集通知は所謂観念の通知ですが、通常意思表示の規定が準用されますので原則は到達主義となりますが、通知すべき相手方が多数の場合には到達時を揃えるのは事実上不可能ですからこの規定のように発信主義が取られます。

従って、招集者は1週間前に本人宛に会議の目的即ち所謂議題を明示した招集の通知を発信しさえすればよく、この場合の到達の危険(その早遅や不到達)は受信者たる区分所有者が負担することになります。
このことにより一部の者に対する不到達が招集手続きの瑕疵ひいては集会決議の違法無効を結果することを防止しています。

1週間は、参加者に集会の議事内容の検討と出席の準備のための猶予期間です。
この期間の計算方法は区分法には規定がありませんから民法(民法138条から143条)により、通知日と集会日との間に中1週間以上の期間を置くということになります。
もとより、この期間も区分法の想定した決め事に過ぎません。
従って、個々の管理組合における構成員の住所地の分布状況に応じて1週間という期間が短すぎたり長すぎたりするでしょうから、この期間を延ばしたり縮めたりして適切な期間を規約で定めることができるものとされます。

ただし、区分所有者が参加できないような短期を設定した場合には区分所有者の集会議決権を侵害するものとしてその規定は無効です。

3.共有者の場合
専有部分の共有者は、その各々が区分所有者ですから(区分法2条2号)、1項の規定ではその全員が招集通知の送付対象者となります。
しかし、通常は専有部分1戸につき1区分所有者であるのが通常のため、議決権も区分所有者数のカウント上は共有者全員を併せて1名としていますし、招集は議決権行使のための召集ですから本来議決権保有者が招集対象者であるべきです。
このようなことから、専有部分が共有の場合には、そのうちの議決権行使者がいればその者に、いなければ招集者が選択する者1名に通知を発すればよいとしたのが2項です。

4.通知の宛先
ところで、通知するためには宛先が分からないと意味がありませんが、その宛先は召集権者が探索するよりも各区分所有者が届出るのが現実的ですから、宛先はまず区分所有者の届出た場所とし、それを怠っている者についてはその者の専有部分宛に発信するものとされます(3項)。

この場合、到達が擬制されますから、発信しさえすれば現実には到達しなくとも招集手続きの瑕疵にはなりません。
発信主義を採用した当然の結果です。

勿論、宛先を探索して現実の住所に送ることはかまいませんし、望ましいことでもありますが、この場合には到達の擬制は受けられませんから集会の適法性保持の面ではかえって危険な行為といえます。

5.掲示でよい場合
3項のように、建物内の専有部分宛に通知するのは、通知は建物から発信して郵便局を経由し建物に戻るという経路を取りますが、それが迂遠な方法であることは否めません。
そこで建物内ではもっと簡便なコミュニケーションが可能であるべきだとして、掲示板での招集を認めたのが4項です。
建物内への通知である点で建物内にいる区分所有者(当然建物内の場所を宛先として届出した者です。)も、届出がないために専有部分宛通知される者と変わりがありませんから、その者も対象となります。
ただし、この方法は個々の直接の通知ほど確実性がありませんから、この簡便な方法を取るためにはその旨の規約の定めが必要です。

6.議案の要旨の必要な場合
上記のとおり、事前の招集は審議内容を検討し会議の準備をさせるものですが、会議の目的たる事項すなわち議題が、所謂特別決議事項のうち義務違反者に対する処置の使用禁止(58条)、競売(59条)、占有者の引渡(60条)である場合を除く、第17条第1項の共用部分の変更、第31条第1項の規約の設定・変更・廃止、第61条第5項共用部分の大規模復旧、第62条第1項の建替え又は第68条第1項の団地規約の設定・変更・廃止の場合にはその重要性に鑑み議案の要旨(概略的な議案の内容)も併せて通知するものとされます(5項)。
更に、新法では団地内建物の建替え規定が新設されたことに伴い、第69条7項の一括承認に付する旨の承認の決議が特別決議に追加されたため、これの議案の要旨の通知が加入されました。

7.議題・議案の提出権
議題・議案の提出権に関しては区分法では独立の条項で定められたものがありません。
35条に会議の目的たる事項として議題を特別決議のほとんどの場合に議案の要領を通知することとされていることから招集権者が議題・議案の提出権者と考えられているようです。
そうすると管理者と少数招集権者が議題・議案の提出権を持つことになります。

各個人が提出権を持つ場合には、不要不急の議題が提出されて集会の効率的な審議に支障が生ずる虞も否定できませんが、1/5という定数は少々過大な要求とも考えられます。
これは管理組合が共同体組織でありその連帯の中で少数意見も事前に管理者に伝達され、管理者の提出権の適切な行使で処理されることを法が予定した結果とも思われますが、現実の管理組合がそのような組織である保証はありませんから、規約により区分所有者の提出権を創設すべきでしょう。

なお、36条の場合、特に全員出席集会の場合には、当該集会で取り上げられる限り個人での提出が認められます。
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