(区分所有者の団体)
第3条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

1.管理組合
第3条は、区分所有者の権能を定める基本規定です。@区分所有者は全員で団体を構成すること、及びA区分所有者はこの法律の範囲内で集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができることが定められています。
この区分所有者の団体は、通称、管理組合といわれていますが管理組合法人の場合を除き、法律上の正式名称ではありません。

2.団体の当然設立とは。
ところで、@の団体は結成手続きなしに当然に結成されていることを宣言したものと一般に説明されていますが、一面、区分所有者(当然複数を予定します。)は前条で定義された共用部分や建物の敷地を共同で所有・管理する一定の集団ですから、この集団をここでいう団体と考えれば「団体を構成」することはこの条項を待たなくとも当然のことように思われます。
他面、団体とは、一定の目的の下に一定の組織を備えて代表者によって活動する一定の集団をいいますから、単に、複数の者が1棟の建物を区分所有したという事実をもって現実に組織も代表者も決まらない段階で団体が結成されたとするのはおかしいようにも思われます。

団体の設立要件の具備
しかしながら、目的、構成員及び組織が確定してさえいれば、即ち現実に代表者が定まっていなくともその選定方法さえ定まっていれば団体の存在を肯定することができ、区分所有者の団体の場合は、本条で構成員が「全員」、目的が「建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行う」と定まり、組織面では集会の方法による内部意思の決定等最低限必要な機関が法定されておりますから、団体の存在が肯定できる場合にあたると考えられます。
このように、区分所有者の団体は、通常の任意・自主的結成の団体と異なり、この法律による法定の強制設立団体ということになります。

団体が実際に行動できるためには。
ただこのことは、代表者により活動しうる団体が存在するというにとどまり、実際に活動するためには具体的な代表者を定める必要があることはいうまでもありません。その場合は、実際の組織ももう少し詳しいものが必要となるものと思われますが、そのような必要に備え、本条では「集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」として、区分所有者の団体が現実的に活動するために必要な権能を認めています。この規定の結果、この権能をどの程度どのように行使する又は行使しないかはこの法律の範囲内で各団体が自由に決定することができます。

普通、法が団体の結成を強制する場合は、団体の性格や組織・代表の方法等実際に活動しうるだけの事項を法定するのが通常ですが、この区分所有者の団体の場合はそうではありません。これは区分所有者の団体の規模等でその性格が異なり一律に組織・代表の方法等を法定することが困難だったためと思われます。

管理組合の法的性格−社団か組合か−
では、通常管理組合と称するこの区分所有者の団体の法的性格はどのように考えるべきでしょうか。
法的性格の異なる団体(人の集団によるもの)の典型は民法に規定される社団(社団法人)と組合です。一般に、社団は社団と各社員が社員関係で結合する団体で、個々の構成員たる社員とは別個の社会的存在が認識されるために社団の権利義務は社団に帰属して社員個人には帰属せず、代表機関を通じて行動し、社員は総会等に参加することで社団の運営に参画するのみであるもの。これに対し、組合は各組合員相互が契約関係で結合する団体とされ、この団体は個々人の集合に過ぎないので権利義務の帰属主体とはなりえないため権利義務は組合員全員に帰属し、その行動も全員又はその代理人が行うもの、とされております。
もとより、これらは団体の典型ですから実際の団体がすべてこの2つに割り切れるとは限りません。従って、管理組合もその実態によりこれらの団体のどちらかにより近いものかを具体的に判断する必要があります。
そうすると、ごく少数で互いに権利義務関係を認識しうるような組合員相互の関係が濃厚な場合を除き、通常の管理組合では組合員は管理組合との関係は認識しつつも組合員相互の関係の認識は希薄であって、理事長という代表者を通じて行動し、組合に関する事項は総会に参画するのみであるのが一般ですから社団的要素の濃厚な団体というべきでしょう。
即ち、管理組合は、一般には最高裁のいう団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ構成員の変更にかかわらず団体が存続しその組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定している、いわゆる権利能力なき社団に該当するものといえます。

なお、一部共用部分があって、それを当該共有者たる区分所有者が管理する場合はやはり当該部分を管理する団体が形成され、その関係は全体共用部分の場合と同様になることになります。

inserted by FC2 system