(選任及び解任)
第二十五条 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
2 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

1.管理者とは
25条は管理者の選解任に関する規定です。
区分法では管理者に関し、第4節では26条に管理者の権限を、27条に管理者による管理所有を、28条に委任規定の準用、29条に管理者の行為に関する区分所有者の責任を規定していますが、他の条項にも管理者に関する規定が存在し、これには総会の招集(34条)、総会の議長(41条)等が存在します。
区分法自体には管理者の定義条項はありませんが、条文に即して簡略に定義するとすれば、管理者とは総会によって選任され区分所有者の代理人として共用部分等を保存し、総会決議事項を実行する者ということになるのでしょうか。

しかし、管理組合が民法の組合であればそのとおりですが、管理組合が社団である場合には管理者をもってその代表機関と考えるのが妥当ではないでしょうか。
そもそも、社団の代表機関である理事の諸規定を見ても民法53条では代表とするものの同44条や同54条では理事を代理人と規定しており、法文自体代表と代理を厳密に使い分けているわけではありません。
この点、区分法では管理組合の性格を当初は組合と認識していたようですから、これを社団とするときは代理人ではなく代表者と考えるのが自然です。
そうすると、管理者とは総会の通常決議で選任され、(権利能力なき)社団たる管理組合の代表者として管理組合の各種事務を外部に代表する機関ということになります。

2.管理者の設置
このように管理者は25条により、原則として総会の通常決議で選任され、また解任されますが、25条の規定は「できる」と表現しておりますから、区分法では管理者の設置を必要的とは考えていないようです。
この理由は、代理であれば本人も行為ができますから、区分法は区分所有者全員が自ら行うことと代理人としての管理者を選任して管理者に行わせることとの選択を区分所有者に認めたという趣旨なのでしょうが、社団の場合は行為主体としての本人が存在しないため代表機関は必須のものとなります。
ただ、このように管理組合が団体として活動するためには区分法の規定に関わらず管理者等の代表機関の設置が不可欠ですが、一般に活動している管理組合では理事会を組織しその代表者たる理事長が管理組合を代表するとされていますから(標準規約36条)、現実には問題がないでしょう。
なお、(権利能力なき)社団では機関名称が法定されていませんから代表機関の名称が管理者に限らず理事長でもかまわないことは勿論です。

3.選解任の別段の定め
更に、1項では管理者の選解任に関し、規約で別段の定めをすることを認めています。
この別段の定めの例としては、規約で管理者を明記する(管理者の規約への登載と解任は規約の設定・変更に当たり特別決議事項となります。)、解任又は選解任を通常決議から特別決議へ加重し、または組合員(議決権)総数の過半数という通常決議を総会出席組合員(議決権)の過半数、更には候補者の最多投票取得者とすること等に軽減するなどが考えられますが、各組合の実態に即して適切な変更をすべきでしょう。
この点、標準規約では、役員の選任を総会の通常決議(ただし、過半数の議決権の出席で総会が成立し、出席議決権の過半数で可決するので全体の1/4を超える賛成があれば可決の可能性がある。)で行い、管理者たる理事長は理事の互選という間接代表制を採用していますが、これも別段の定めと認められます。

4.管理者となる資格
ところで、1項では選解任方法を規定するのみで、管理者たる資格の規定がありませんから、管理者は区分所有者に限らず誰でも適任者を選任できると考えられます。
このように、管理組合の代表者としての管理者はその業務範囲が広範に及びますから、広く適任者を選任できるとすることは妥当でもあるでしょう。
そして、その被選任資格としては個人に限らず法人でも可能と思われます。
ただし、個人の場合には意思能力さえあれば未成年や被保佐人等でも法律上は可能でしょうが、管理者としての責任を考慮すると現実には避けるべきでしょうし、法人でも管理組合と継続的な取引関係を持つ管理会社等も法律的には可能ですが、その利益相反関係から現実には避けるべきです。

5.裁判所による解任
第2項は、裁判所による管理者解任の規定です。
管理者は第1項により総会で解任することが可能ではありますが、総会は多数決原理で運営されるため、仮に管理者に不正その他地位にそぐわない行為があっても解任決議が可決される保証はありません。
また、スラム化等により多数の区分所有者が管理への参加の意欲を失い総会自体が機能しなくなる場合もあり得ます。
これらの場合の少数者や区分所有者の利益保護のため区分所有者が単独で管理者の解任手続きを起こせるとしたのが2項です。
この解任権は単独権であり、その請求の是非の確認と濫用を防止する観点から裁判所に請求するものとされます。

6.その他の退任原因
その他、管理者は任期(法に規定がないため規約で定めることになります。)の満了又は、委任の規定の準用(法28条)により、管理者の死亡・破産・被後見開始(民法653条)、管理組合の破産により退任します。

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