(分離処分の無効の主張の制限)
第二十三条 前条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反する専有部分又は敷地利用権の処分については、その無効を善意の相手方に主張することができない。ただし、不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることを登記した後に、その処分がされたときは、この限りでない。

1.善意の相手方に主張できないことの趣旨
23条は22条に定める分離処分禁止の効力に関する規定です。
その本文(ただし、で続く但書の前の文章)では、22条違反の分離処分の無効の主張を善意の相手方に主張できないと規定します。

22条で説明したように土地と建物は別の物でありそれぞれ自由に処分できることが日本の原則ですから、区分法の一篇の条文で一定の場合は分離で処分すると無効ということを貫徹すると、その取引が一定の場合に該当するものであるかどうかは一般には分かりませんので、他の土地建物と同様であるはずとの原則的な考えの下に分離処分が禁止されている物件と知らずに(これが善意の意味です。)敷地又は区分建物を取得した者(これが相手方です。)は不測の損害を受けてしまいます。
そのような結果を回避するため、22条の分離処分禁止もそのことを知らない者には主張できないとして善意の相手方を保護するのが本文の趣旨です。

2.その結果と悪意の場合
このように23条本文により善意の相手方には無効を主張できない場合は、分離処分が有効となりますが、その後の処理は10条等の問題になり結果的に問題は先送りされることとなります。
また、この規定は善意の相手方保護の規定ですから、相手方自ら無効を認めることは差し支えなく更に、悪意(分離処分禁止の物件であることを知っている。)の相手方は保護に値しませんから、22条の原則どおり無効のままということになります。

3.敷地権の意味と効果
しかし、善意者と悪意者の取扱いを区別しても、本来分離処分すべきでないものの分離を認める結果はけっして好ましいものではありません。
本来、善意悪意の区別無く同一の結果にすべきですが、その手段として土地と建物の別の物との前提を修正できない以上、分離処分禁止の旨を広く知らしめることが次善の策となります。
このような考えから、不動産登記簿に区分建物と敷地利用権を一体表示してその一体性を公示し、その旨知ろうと思えば知れるようにして分離処分禁止効を貫徹しようとするのが、但書で定める敷地権の制度です。

但書で本文の無効である旨を主張できないことを二重否定することにより、善意の相手方にもその無効主張できることになりますので、敷地権登記のある区分建物は、分離処分禁止効が善意の相手方にも主張でき、分離して処分しても無効となります。
このように見ると、本文は但書で新設した敷地権制度を強調する枕詞的な部分のようであまり意味は無く敷地権の新設を強調した方がよかったようにも思われます。

4.敷地権の登記
なお、敷地権とは不動産登記法上の概念であり、区分法に敷地権なる言葉はありませんが、不登法によれば敷地権とは登記された敷地利用権で専有部分との分離処分が禁止された権利(不登法91条2項4号)、即ち登記された敷地たる土地の共有持分、借地権(地上権又は賃借権)の準共有持分をいうものとされています。

敷地権は、1棟の建物の登記の表題部に対象たる敷地の所在・地番・面積等の表示がなされ、専有部分の登記の表題部に対象たる敷地権が所有権か賃借権か等の権利の種類とその割合(持分)が公示されます。
同時に、土地登記簿にも敷地権設定の登記がなされて(不登法93条の4)土地の移転登記が登記上規制され、それ以後は建物の登記にそれに付随する敷地権が同居している形態となって、建物に敷地権が随伴するようになります。
このように敷地権登記は、22条の定める分離処分禁止という消極的規制を越え、区分建物に敷地権が随伴するという共用部分の一体性と同様な一体性を認める積極規制の方向に更に一歩踏み込んでいる感があります。

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