(定義)
第二条 この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
2 この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。
3 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
4 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
5 この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。
6 この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。


1.定義条項とは。
区分所有法はいろいろな条項で一定の事項を繰り返し規定することがあるため、一定の事項を一定の言葉に定義する定義規定を定めていますが、第2条がその定義規定となります。

2.区分所有権
この定義条項によれば、第1条の建物の部分(これを3号で専有部分と定義しています。)を目的とする所有権、すなわち専有部分の所有権を区分所有権といいます。
区分所有権も所有権であり第1条の建物の部分も不動産ですから、区分所有権も通常の不動産の所有権に変わりがありません。従って、その得喪変更は当事者間では意思表示により効力を生じ、それを第三者に対抗するには登記が必要なことに変りはありませんが、特に区分所有権と定義したのは単に目的物が物の一部であるから特殊だからというよりも第2号の区分所有者を定義する前提として必要だったものと思われます。

すなわち、区分所有者は、1から3号により、区分所有権者であり、また専有部分の所有者である者ですが、専有部分が共用部分なくして物理的にも機能的にも存在し得ないことから、必然的に他の共用部分所有者たる他の区分所有者との交渉を持たざるを得ないことや、また当該専有部分の利用も共用部分や他の専有部分に対する影響を考慮せざるを得ないため通常の所有権の権能である目的物を自由に使用収益するということに何らかの制約を設ける必要があるからです。このことはそのまま区分所有法という民法の特別法を制定する理由でもあります。

3. 専有・共用という表現について
ところで、区分所有法をはじめてみた人は「専有部分」や「共用部分」という表現に多少混乱があるかもしれません。「専」と「共」、「有」と「用」という文字は、それを組み合わせることで、「専有」、「専用」、「共有」、「共用」ができます。この4つの語は「専有」は特定の者の所有を、「専用」は特定の者の使用を、「共有」は複数の者の所有を、「共用」は複数の者の使用をそれぞれ意味すると考えてよいでしょう。そこでこの語の相互の関係を考えてみますに、「専有部分」が「専用部分」であることは当然ですが、「専用部分」がバルコニー等のように「共用部分」を専用的に使用する場合があり当然に「専有部分」であるとは限りません。また同様に、「共用部分」が「共有部分」であることは当然ですが、「専有部分」の共有の場合のように「共有部分」が当然に「共用部分」であるとは限りません。この文字のこのような関係から、建物の一定部分を正確に定義するため、1棟の建物のうち区分所有権の目的たる建物の部分を「専有部分」といい、専有部分以外の建物の部分を「共用部分」といっております。

4.共用部分の例
このように、4号により専有部分のある1棟の建物のうち専有部分を除いた残りの部分、エントランス、廊下、エレベーターホールや屋上、外壁等を共用部分といいますが、建物には建物本体のみならずその効用を果たすための電気・空調・給排水設備が附属しておりますから、これも附属物として(専有部分の附属物を除いたものが)共用部分となります。

5.専有部分と共用部分の境界
なお、専有部分の配管・配線等は通常物理的に連続しておりますから、これらについてどこまでが専有部分でどこからが共用部分かは疑問があります。常識的には結点部分で分岐しているため、ここが責任分界点と思われますが、法律的にはその材質の物理的性質にはよらず専有部分と共用部分の接線で分けられます。これは物理的に一体の壁の中心で専有部分の範囲を分ける壁芯説と同様の考え方です。尤も、この点は法律の条文で明確には決まっておりませんから物理的な接点で分けるという規約上の合意をしておけばそこが責任分界点となります。

6.付属の建物
共用部分で残るのは第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物です。附属の建物とは、マンション本体とは別棟として建てられた集会室・水道ポンプ室・下水道処理室等の本体建物に付随する建物をいいます。これらは主たる建物から一応独立した建物ですから当然には共用部分とはなりませんが、規約で共用部分とすることができます。

7.規約共用部分とすべき場合
共用部分とした場合としない場合の違いは、適用される法律が民法か区分所有法かの違いとなって現れます。共用部分とした場合は区分所有法が適用されますからその扱いは他の共用部分と同じですが、共用部分としない場合は民法が適用されますから、その施設の保存行為は単独で、管理行為は持分の過半数で、変更行為は全員の合意で行い、各自の持分は全て登記され持分の処分や分割請求も自由となります。従って、附属の建物の性格、用途にもよりますが、他の共用部分と同様の全員の共同利用施設である場合は規約で共用部分とするべきでしょう。

8. 敷地
第5号は建物の敷地を定義しています。それによれば建物の敷地は原則として建物が所在する土地とされます。これはマンションの水平投影下の土地をいいその土地の地番がここでいう建物の所在地となります。従って、付置公園・駐車場等事実上マンションと一体として利用されている土地の地番が異なり且つそれがマンションの水平投影下にない場合は当然には区分所有法上の建物の敷地とはなりませんから区分所有法の定める分離処分禁止効が及ばないこととなります。それでは不都合ですから規約で建物の敷地と規定することにより区分所有法上の建物の敷地とすることができます。

9.敷地利用権とは
ところで、我が国では土地と建物を別個の不動産としておりますので、建物を所有するためには建物に対する権利の他土地に対する権利が必要となります。第6号で定める敷地利用権とはこの土地に対する権利のことです。ただし、第6号自体は敷地利用権自体の権利の性質・発生原因・効果その他権利の創設に関する必要事項に何ら触れるところがありませんから、第6号は新たな権利を創設した規定ではなく建物を所有するための土地に対する既存の権利の総称であると理解されます。そうすると敷地利用権の種類は所有権、地上権、賃借権(地上権、賃借権を総称して借地権といいます。)、使用借権(現実にはありえません。)の4種類をいうことになります。

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