(共用部分の管理)
第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

18条は共用部分の管理に関する規定です。
1項では、最広義の管理のうち前条の変更の場合を除く範囲の管理(広義の管理)について集会の決議で決するものとされています。
そして、集会の決議は法39条1項で区分所有者及び議決権の各過半数で決するとされていますから、前条、本項本文及び但書を総合すると最広義の管理のうち、変更は区分所有者及び議決権の各3/4以上(3/4を含み、可決となります。)、保存を除く狭義の管理は区分所有者及び議決権の各過半数(半数は含まず、否決となります。)、保存は本項但書により集会の決議も不要で区分所有者が単独でそれぞれ可能ということになります。
このことを法の原則である民法を例に対比してみますと、民法では1個の物を対象とし、且つ各共有者の所有権が並存する通常の共有についての規定ですから、各自の意思を無視することはできずその物の使用価値や交換価値を維持することは保存行為者のみならず全員の利益となるため各自が単独でできるとし、またある人の使用価値の実現は他の共有者の使用価値の実現と衝突することになるためその調整を持分の過半数という方法で行うこととしています。更に目的物の形状・性質・特性の改変である変更に関しては全所有者の個人的利害にかかわるため全員の承諾を要することは当然と思われます。
これに対し、区分法では、保存行為は全員の利益行為として民法の原則どおりですが、管理行為は民法と異なり各人個人的な利益も配慮に値することから区分所有者数もカウントの対象とし、且つ民法と異なり当然の区分所有者団体の成立を認め、集会という組織・機関を設置していますからその承認も集会の決議で決するとしています。
更に、変更は前条での説明のとおり全員の合意では事実上管理が不可能となることに鑑み民法の原則を強制的に緩和して集会の区分所有者及び議決権の各3/4以上の決議に変更していることが分かります。

ここで管理(狭義)とは、前条の変更に至らない共用部分の使用・収益・修繕・改良その他一切の行為のうち保存を除いた行為を指称する概念といえ、変更・保存行為以外は全て管理行為です。
従って、本条は変更の場合の取扱いを定める前条と一体として、共用部分に関する全ての行為は原則として集会の議決に基づく必要があるとする集会中心主義を定めた規定と言えます。

なお、保存行為は物の現状を維持する行為で、その使用価値や交換価値を保存する行為をいいます。
一般には不法占拠の排除や管理費用の立替え等がその例に挙げられていますが、単独行為での行使を認められていることからも分かるように、保存行為とはその実施が全員の利益になりこそすれ誰からも反対がなさそうなものが想定されていますので、価値の保存ということから新築時の価値を保存・回復する工事のようなものはその範囲を超過するものといえます。

ところで、最広義の管理とは処分に対する概念ですが、法が明文で規定する変更・管理・保存の場合以外に処分行為がありうるかは一つの問題です。
これに関しましては、対象とする共用部分全体の見地から考察するときには管理・保存行為にも部分的な処分が包含されること、本来全員の合意が必要な変更を特別多数の賛成と緩和していること、共用部分は形式的には全員の総有であるとしても実質的には管理組合団体の所有でありその処分というのは実質的に団体の事務の執行に過ぎないこと等からすると、当該処分行為は本来処分行為として独立にその是非を判断すべき問題ではなく当該行為が1個の行為の場合は当該行為自体または当該行為がある目的を達成するための一連の行為の一部の場合は当該行為を含む全体としての行為が共用部分全体の見地から変更に該当するのか、それとも管理か、保存かで必要な手続きを踏めば足り、当該行為自体を抜き出して処分行為云々する必要はないものと思われます。

2項は、第1項の原則である管理行為は集会の決議で決すること、保存行為は、各共有者がすることができることについて規約で変更を認める容認規定です。
具体的には、管理行為を理事会の決議で決することにしたり、管理者の判断で実施したりし、また保存行為が各人の判断で実施できることには保存行為の該当性判断が各人各様では収拾がつかなくなりますから規約で原則として個人の行使を禁止すること等が考えられるでしょう。
ただ一般のマンションで範囲の広範な管理行為の実施権限の全てを総会以外の機関に委譲する必要性や妥当性は考え難いところですが、集会(総会)は区分所有者全員で組織する非恒常的な機関ですから総会が共用部分の管理運営の全てを行うということは決して現実的ではありませんので管理行為の軽微又は総会で大綱を定めた細目的な部分を理事会等の下位機関に委譲することは必要性や合理性が認められるでしょう。
このように2項は各管理組合の実情に合わせ規約により総会と理事会・理事長との間で相当な管理行為の権限の配分を行うときの根拠規定となるものといえます。

3項は変更の場合の特別の影響を受ける者に対する承諾取得義務の管理行為への準用規定です。
管理行為と変更行為は程度の差に過ぎないともいえ、特定の区分所有者に対する影響も管理行為の場合には発生しないとはいえませんから、管理行為が特定の区分所有者に特別の影響即ち受忍限度を超える受忍を強いる場合には当該区分所有者の承諾が必要とされるのは当然でしょう。その場合の判断基準等は前条2項の場合と同様です。

4項は、損害保険の付保契約を管理行為とみなす見做し規定です。
見做し規定とは、本当はそうではないものをそう扱う特別規定で、損害保険の付保契約は内容に如何にかかわらず、この規定により管理行為として扱われることになります。

inserted by FC2 system