(共用部分の持分の処分)
第十五条 共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。

第15条1項は、専有部分と共用部分の処分の一体性を定めた規定です。
この法律では区分所有権と共用部分の持分権は別個の権利とされており、専有部分と共用部分は建物の部分として別個の部分とされていますが1棟の建物の主役はあくまで専有部分たる区分建物であり共用部分は専有部分が十全な効用を発揮できるための従たる部分にすぎません。
従って従物は主物の処分に従う(民法87条2項)との原則に基づき共用部分の権利は専有部分の権利の処分に従うとしたのがこの規定です。
尤も民法での従物は独立した物で本来単独処分が可能なものですが、共用部分はそのような独立した権利の客体となるには本来なじまないものですから主物たる専有部分との結びつきはより強固な関係にあります。

更に別の観点から考えると、共用部分の持分は合有又は総有における持分ですからもともとそれ自体の処分はありえず団体の意思による他構成員の地位と共にしなければ処分できないものです。そしてこの団体の構成員の地位は専有部分の得喪により、あるいは取得しあるいは失いますから、共用部分の持分(ここでは14条と異なり権利の意味です。)は専有部分の得喪による団体構成員の地位の得喪に応じて得喪することとなります。即ちこの規定は共用部分の権利は専有部分の権利と一体となって、移転しあるいは消滅することを宣言した規定と理解することもできます。

この規定により、特定の区分所有者が自己の専有部分を譲渡や担保の設定をすれば自己の共用部分の持分も当然に(仮に譲渡等の意思がなくても、譲渡・担保目録から漏れていようとも)譲渡等をしたことになる反面自己の専有部分と分離して共用部分の持分を譲渡しても、共用部分の持分を留保して専有部分を譲渡しても共用部分の譲渡や留保は無効となります。
なお、処分とは所有権の譲渡・その原因となりうる各種担保権の設定・放棄・民法602条を超える使用権の設定等をいいます(民法602条内のものは管理行為として18条の規制を受けるものと考えられます。)。

2項は、第1項の例外規定です。この項の「その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。」ということは第1項の「専有部分の処分に従う。」ことを言い換えたにすぎませんから、2項の代わりに第1項に「ただし、この法律に別段の定めがある場合はこの限りでない。」と規定するのと同じです。
そこで何が特段の定めになるかですが、全体財産としての共用部分全体の持分の場合は、まず管理所有が専有部分の権利を保持したまま共用部分の所有権を管理所有者移転するものですからこれに該当し、次に持分は規約で設定・変更することができるという意味で持分変更を内容とする規約の変更がまたこれに該当します。
更に個々の財産としての特定の共用部分の持分の場合では、特定の共用部分はその所有団体たる管理組合の意思により処分されますからその場合も当該部分の持分が専有部分と分離して処分されます。

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