(共用部分の持分の割合)
第十四条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

第14条は持分に関する規定です。
持分という用語には持分権という意味での共有の権利そのものを指す場合とその割合(持分割合)を指す場合がありますが、ここでは割合を意味しています。
共用部分は区分所有者の共有ですから共有者間の関係を適正に処理するためには各共有者の権利や義務の割合を定める必要があります。それが持分割合です。

持分割合を何を基準に定めるかについては、いろいろな考え方があり大別して面積を基準とするか価値を基準とするかに分かれますが、単一的且つ客観的な基準として一般には面積基準が勝るというべきでしょう。
1棟の建物を物理的に観察すれば専有面積の単位面積当たりに必要な共用部分は一定のはずですから各専有部分が必要とする(即ち各専有部分に付随する)共用部分の量(割合)は専有部分の面積に比例するというのは一応の合理性がある考え方です。
そこで本条1項では面積基準の採用を宣言しています。ちなみに民法や商法では一般に出資割合が基準となっております。

ただし、民法と異なり共用部分を使用する権利は持分の多寡に係りませんから、持分を決定する実益は議決権という名の発言権の割合と管理費等の負担の割合の決定基準となることとなります。
そうすると大都市の大規模複合ビルのように区分建物の用途が異なる等により発言権の割合と管理費等の負担の割合を他の用途の建物と異にすべき理由のあるときは建物価値も考慮した持分割合を設定する必要があります。

第2項は、一部共用部分の面積算入規定です。
一部共用部分は一部の者のみの共有に属するため全体共用部分との関係においては専有部分に準ずるものと考えられます。このことは当該一部共用部分(に関する専有部分)を1人の者が所有している時を考えれば明らかであり、これらの者と全体共用部分のみを所有する者との関係を公平に取り扱うためには一部共用部分の面積を当該一部共有者の専有面積に加算して全体共用部分の持分算定の基礎とすることが必要だとするのが本項の趣旨です。
しかしながら、一部共用部分はあくまで共用部分で専有部分ではなく、一部共用部分が専有部分と同程度に共用部分に負荷を掛け又はその恩恵を蒙る部分であるかは疑問です。この規定により一部共有者は一部共用部分の負担に応ずる他一部共用部分の負担する全体共用部分の負担にも応じなければならずその結果が妥当かには疑問があります。

3項は、専有面積の算定方法を定めた規定です。
所謂内法面積を採用しています。これはまた区分建物の登記面積でもあります(1棟の建物面積は戸建てと同様壁芯面積ですが。)。
専有部分の範囲に関しては壁芯説と上塗り説(内法説)が有りましたので面積計算の両基準もこれらに対応しているものといえます。
しかし、本項の面積は専有部分の範囲を計測する趣旨ではなく共有持分算定の根拠としての基準を求めているにすぎません。
従って、専有部分の範囲に関する内法説等のどれを採用するかという問題と本項の面積算定基準をどれにするかとは全く無関係といえます。事実標準管理規約でも専有部分の範囲は上塗り説ですが持分算定上の面積は壁芯面積としております。

壁芯面積を採用した方が将来的な区分建物の合併・分割時に専有総面積の変更が必要ないこと、建築中で内法面積が算定できない時期に規約等を作成する場合は壁芯面積(建築確認申請面積)を使用する必要があること等から、この面積の計算方法は壁芯面積基準が望ましいといえます。

4項では、前3項(これは前の第3項を指すのではなく、これより前の3つの項という意味です。)即ち第1項から第3項の原則を規約で別の定めに変更することの許容規定です。
従って、1項の持分算定の面積基準を不動産鑑定に基づく価格基準に変更したり、複合用途建物で各用途別に一定の乗数を乗ずる等により合理的な持分算定方法に必要に応じて変更することができます。
また、2項では一部共用部分の面積算入をしないとする扱いやその半分だけ算入する扱い等その建物にあった変更ができ、3項の内法計算の原則を壁芯計算に変更すること(実際のほとんどの規約はこの変更を行っています。)ができることになります。

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