(共用部分の共有関係)
第十一条 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
3 民法第百七十七条の規定は、共用部分には適用しない。

第11条は共用部分の帰属とその法的性質に関する規定です。
共有とは共同で所有することです。第4条にあるように共用部分は区分所有権の目的にはなりませんし、無主物のままに置いておくわけにもいきませんからその帰属を決定する必要があります。
共用部分は読んで字のごとく共同して利用する部分ですから共同利用者に帰属させるのが利用権の安全のために一番望ましいことですから共同利用者の共同所有とされています。
このことは一部の者の共同利用部分も同様ですから一部共用部分は一部利用者の共有とされています。
この結果、共同利用者の利用権限は所有権に基づくものであることになります。

ところで共有には、民法上通常の共有、合有、総有の3種があるとされております。
通常の共有では、1個の所有権が共有者の持分割合で分属している又は共有者の数だけの所有権が1個の物に成立し各所有権が持分割合で制限しあっていてその総和が1個のものに対する1個の所有権の大きさに等しいの両説がありますが、いずれも持分の性質が他の持分により制約を受けるとはいえ所有権そのものとしていますから、所有権の性質即ち物を自由に使用・収益・処分することのうち、目的物全体にかかわる使用・収益権は他の共有者の持分の制限を受け持分に応じた使用・収益権となり、処分権には制約がなく持分を自由に処分できるとされています。
勿論、物全体としての処分は持分全部の処分を意味しますから全員で行わなければ効果はありません。

合有の場合は、民法の組合における共有形態が代表例であり、共同事業のために各自の持分を供出し物の合同所有となる形態で、使用・収益権は共同事業に組み入れられ各自のための利用は不可能となり、持分の処分も共同事業に支障を生じるため禁止されるものです。
ただ、業務執行者(執行代理人)が選任されればその者が、選任がない場合は各自が共同事業の業務執行権の一環として他の者の代理権を有しますから、全員を代理して物の使用・収益・処分を行うことができます。
業務執行権の一環といえない場合は各自に代理権がありませんから、物全体として全員の持分を全員が処分する必要があるのは通常の共有と同様です。

総有の場合は、部落の入会権における共有形態が代表例であり、部落民に入会地の使用・収益権が認められますが、持分の観念が認められずその処分もありえない形態です。
入会地に関する権利は総体としての部落民全員に帰属し、従ってその権利の処分は全員の合意が必要とされています。

このように、共有といっても上記のどれにあたるかで各共有者のなしうる権限を異にするので本条の共有がどの種類の共用であるかが問題となります。
ここで法の規定を見ると本条で共有とし、第14条で持分を認めていますから総有ではないようです。また、第15条で持分の処分を制限していますからこれらを総合すると、本条の共有とは合有であると見るのが素直な理解のようです。
しかしながら、構成員の財産所有の性質が合有というのは民法上の組合財産とする考え方であり、管理組合を民法上の組合と理解する考え方です。
団体を構成する場合の各構成員の財産所有の形態は団体の性格により左右されるので、管理組合がどの団体かで結論が異なるはずです。
本条が制定された昭和37年当時の支配的な学説(我妻栄 民法講義中二P)は管理組合を民法上の組合と構成していましたから、本法も合有を前提に立法されたことは想像に難くありませんが、現在では管理組合は一般には(権利能力なき)社団とするものが大勢をしめておりますので立法時と見解が異なっています。
そうすると管理組合財産は社団である管理組合自身の財産と考えるのが現在の見解の結論てあるべきでしょう。
従って、この社団即ち管理組合が法人の場合は名実ともに管理組合の財産であり、権利能力なき社団の場合は形式上の権利帰属能力がないため実質的には組合の形式的にはその構成員総員の財産(構成員各自からは総有と見られる状態)となることになります。

結局、本条1項は管理組合が民法上の組合であるケースには組合員各自が共用部分を合有する旨の規定となりますが、管理組合が権利能力なき社団である場合は総有を、更に管理組合が法人の場合は意味のない規定(社団の財産に対する潜在的権利を表すのみ)ということになります。
但し、総有だからといって、共用部分の取扱いが入会地の処分例のように全員一致が要件になるわけでは有りません。

第2項は、規約で定めることにより、共用部分が全員の共有であることや一部共用部分が当該一部の者の共有であることを変更することができるとする規定です。
共用部分や設備でも、全ての階に着床する非常用エレベーターと低層階用・高層階用エレベーターのように全員が均等に恩恵等を受けるものや一部の者がより多く受けるものなどがありその全体共用性は様々です。
また、一部共用部分については一部共有者が組合を構成して独自に管理できるのですが、組合内の小組合を結成運営するのも手続きが煩瑣なことは避けられません。
そこで、各々の実態に即した共用部分・設備等の帰属や管理単位を規約にて確認・設定できるとするのが本項です。
ただし、共用部分が区分所有者に帰属することは当該部分の共同の利用を保証する担保ですから、区分所有者か管理者でなければ共用部分の所有者にはなれないこととなっています(第2項但書)。

共用部分は、専有部分と分離して処分ができず、且つ法定共用部分は単独で所有権の目的はなりえない部分です。
また、規約共用部分も規約共用である旨の登記を行うことにより取引を記録する甲・乙の両区が閉じられ取引の客体性を喪失しますから、いずれも取引の目的となりえません。
従って、共用部分に関し権利の得喪変更を第三者に対抗するという自体は生ぜず民法177条の対抗要件としての登記は不要です(第3項)。 inserted by FC2 system