本件は、分譲業者が団地造成時に市に譲渡した緑地部分を、他のマンション分譲業者が市の認可を受けて自己の販売するマンションの進入路に改修したことについて、団地管理組合が緑地としての保存義務に反するとして市長に対して認可無効と市に対して緑地への原状回復を請求した事例である。
以上によれば、原告は本件承認処分の無効確認を求める当事者適格を有しないこととなり、被告市長に対する訴えは却下を免れない。」として、団地管理組合の訴えを却下し、「団地管理組合法人である原告が被告市に対して、本件土地を含む<地名略>の土地を緑地以外の用途に使用しないよう求める権利を取得することはあり得ないから、原告の請求は理由がない。」として、団地管理組合の請求を棄却したものである。
本件も、前出の成18年09月08日東京地方裁判所平成17年(行ウ)第386号裁決取消請求事件(甲事件)平成17年(行ウ)第435号建築認定処分取消請求事件(乙事件)と同様の管理組合の当事者適格(原告としての訴えの可能性)が問題となった事件である。
所有者ができる裁判だから所有者の団体でも当然できる、というのは一つの考え方ではあるが、逆また真ならずで団体の権利能力・目的に外れる場合は、構成員の性格を団体が承継できない一事例である。
代理人弁護士は、裁判前に当事者適格不存在を当然理解し、この判決を予想したであろうが、依頼者側の管理組合の裁判強行意思が固かったため訴えを提起したものであろう。
もともと自分たちの土地(造成時の団地内の土地で団地建築のために地元自治体に譲渡したもの)を迷惑な隣地マンション建築のために転用された、という事実がよほど腹に据えかねたものと思われる。勝敗を度外視して、世に問題を提起するために行う裁判というものもあるが、無理筋の裁判は無駄な費用を管理組合にかける結果となるため、理事会等の執行部は開始前に冷静に裁判の可否を検討すべきであろう。