平成20年3月25日東京簡易裁判所平成19年(ハ)第28255号管理費等請求事件の解説

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本件は、新標準管理規約で新設された弁護士費用の損害賠償規定にかかわる事件である。

裁判所は、@敗訴者に相手方の弁護士費用を負担させる旨の合意等(本件規約を含む)を定めることは,一律に違法とまではいうべきではなく,既存の法律の趣旨,条項に違反しない限りは,その効力を認めるべきである。

A管理費等の未納者に対し規約において違約金を定めることは原告のようなマンション管理組合が区分所有であるマンションを管理運営する上で必要な事項であり,区分所有法30条1項に定める「建物の管理に関する事項」に該当するというべきである。

B管理費等の未納者に対しその支払いを求める場合において,事案に応じて,その手続を弁護士に依頼する場合が想定され,弁護士に依頼をすれば相応の弁護士費用がかかることになり,その費用を違約金として規約に定めること自体は合理性があり,区分所有法の趣旨に反するものではないというべきである。として、2万6250円の弁護士費用の違約金を認めた。

簡易裁判所の事例ではあるが新標準管理規約の改正規定を是認した形であり、地裁等の上級裁判所でも是認される可能性が強まったといえるであろう。

しかしながら、@金銭債権の債務不履行は原則としてその一切を遅延利息が賄う建前であること。

A管理規約は契約と異なり反対者や区分所有者の承継人に強制力を持つものであり、契約当事者のみ拘束する合意とは性質が異なること。

B簡易裁判所を含め第一審段階では訴え提起の方法等について裁判所で相当な助言が得られるサービスがあり、未払いが明らかな裁判で弁護士の援助が必要不可欠とは思われないこと。等から被告側の主張である管理規約に弁護士費用を請求できる旨の記載があるとしても,その規定自体が違法なものであって,被告が負担すべきものではない。との見解に賛同したい。


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