平成18年03月09日福岡高等裁判所平成16年(ネ)第581号損害賠償請求事件の解説

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本件は、新築マンションを購入した区分所有者が、民法570条の定める売主の瑕疵担保責任に基づき,販売主に対して外壁タイルの剥離・剥落及びその補修工事の騒音等による交換価値の下落による財産的損害,慰謝料及び弁護士費用の損害賠償を請求した事件である。

第1審の地裁は、いずれの請求もすべて棄却したが、控訴審の福岡高裁(本判決)は、3割相当の価値減価、一律500万円の慰謝料請求に対して,5%相当の価値減価、30〜20万円の慰謝料の限度で請求を認めたものである。

自動車の事故歴の場合と異なり、建物の場合は修繕で原状が回復されるのが通常であり修繕事例による評価損の存否は難しい。そのため、第1審の地裁が、原状が回復され減価は現存しないとして、請求を否定したのもやむを得ないと思われる。

この点、高裁では一転して請求を一部認容したが、その額等を考慮すると、新築入居前からこの瑕疵は顕在化してその補修のため、入居後2年余り工事の騒音等に悩まされた何の落ち度もない区分所有者に対する一種の救済判決と思われる。

そのためか、「本件補修工事によって上記瑕疵が修復された結果,外壁としての機能上の問題は今のところ解消された」といいながら、「本件マンションの上記瑕疵が顕在化したことから一度生じた,本件マンションの新築工事には外壁タイル以外にも施工不良が存在するのではないかという不安感や新築直後から本件マンションの外壁タイルに対して施工された大規模な本件補修工事から一般的に受ける相当な心理的不快感,ひいてはこれらに基づく経済的価値の低下分は,本件補修工事をもってしても到底払拭しがたいといわなければならない。」として不安感に対する賠償を認めた点や区分所有者に対して共用部分の損害を認定しながら、管理組合との和解金をその額に反映させていない等、処理に問題も含む判決となっている。


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