昭和56年5月29日神戸地方裁判所昭和51年(行ウ)第31号固定資産税賦課処分取消請求事件の解説

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本件は、マンションの区分所有者が土地の固定資産税・都市計画税について、敷地の共有持分に対して各区分所有者ごとに課税せず敷地全体に対して全員に一括課税しているのは違法であるとして、税額の賦課決定の取り消しを求めた事例である。

一般に共有土地に対する課税は、単独所有者に固定資産税および都市計画税を賦課した場合と比較して、@免税点に該当するか否かにつき、課税台帳を判断の資料にすることができない。A納期前の納付による報酬金の取得は、共有者全員の一致が必要なため、ほとんど不可能である。B延滞金の計算上、端数切捨で不利である。C納税証明書の交付を受けることができない。等の不利益な取扱いを受ける。
また、共有物に対する地方団体の徴収金は納税者が連帯して納付する義務を負うが、民法における連帯債務者のように、主観的連帯関係をもつた者の間において適用されるべきであり、共同住宅所有者のような、相互に面識もない、主観的連帯関係のない者の間においては適用されるべきではない。とも言いうる。

原告のこのような理由による賦課決定の取り消しの請求に対し、裁判所は、
@固定資産税および都市計画税は、不動産を所有する事実を課税要件とし、その資産価値自体に着目して課せられる財産税の一種であつて、共有物については共有者全員が納税義務者となり、かつ、連帯して納税義務を負い、各自独立して共有物全体にかかる固定資産税および都市計画税の納税義務を負うものであるから共有土地に対する固定資産税及び都市計画税の課税処分は、当該土地共有者の各持分に応じて、またはこれに対してなされるものでない(法三四二条、一〇条の二、一〇条、民法四三二条参照)。

A被告が原告ら一七〇名の本件土地の共有者に対して持分によらないで本件課税処分をしたことに、なんら違法はなく、単独所有者に固定資産税および都市計画税を賦課した場合と比較して、原告主張(1)ないし(4)の取扱いの差異があつたとしても共有は、単独所有とは、その所有の形態において異る以上、これを合理的な理由のない差別があるということはできない。

等として、原告の請求を棄却したものである。

敷地の課税方法の参考として紹介する。

なお、本件は控訴されたが、高裁は被告市側の本案前の主張である納税通知書の宛名人でない原告に当事者適格が無いとして本件訴えを却下している。(昭和58年03月30日 大阪高等裁判所昭和56年(行コ)第43号 固定資産税賦課処分取消請求控訴事件)

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